ロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP:Robot Assisted Radical Prostatectomy)

前立腺全摘術の図

 前立腺がんの根治手術は、全身麻酔をかけて前立腺・精嚢を尿道と膀胱から切り離して摘出し、膀胱と尿道をつなぎあわせる(吻合)もので根治的前立腺全摘除術と呼んでいます(図1)。大きく分けて腹腔鏡手術と開腹術とがあります。当院ではダビンチという手術用ロボットを使って腹腔鏡手術をおこなうロボット支援腹腔鏡下前立腺摘除術(RALP:Robot Assisted Laparoscopic Prostatectomy)また一般にはがんに対して行うのでタイトル書いたようにロボット支援根治的前立腺全摘除術(RARP:Robot Assisted Radical Prostatectomy)とも呼んでいます。ともに長い名称なのでラルプと略しています。

2006年より日本に本手術が導入され、先進診療で自費診療が施行されてきましたが、2012年4月より保険適応となりました。具体的には下腹部に6本のトロカーといわれる器具を刺して、このうち4本を用いて術者がロボットアームについたカメラや鉗子や電気メスを遠隔操作して手術を行い、あとの2本を使って 助手が針や糸の出し入れなどを行っています。(図2)

ポート図

ロボット手術の利点は腹腔鏡下での拡大した立体的な良い視野で、手の動きより複雑で繊細な手術を行うことが可能なことです。このため出血が少なく、前立腺と精嚢をきれいに切除でき、確実な尿道膀胱吻合ができるなどのメリットがあります。また開腹も早く、術後は翌日から水分摂取や食事・歩行が可能です。尿道カテーテルを約1週間留置して造影検査で吻合部の漏れがないのを確認して、カテーテルを抜去します。入院期間は約2週間以内の方がほとんどです。合併症としては術中には出血、術後には尿失禁と勃起不全(ED)などがあります。出血は少ないので他人の血(血液センターからの輸血)が必要となることはほとんどありません。尿失禁は立ち上がったときや咳・くしゃみなどお腹に力を入れたときに尿が漏れる腹圧性のものが多いですが、90%以上の方が術後3か月以内におむつが1枚以下までに回復しています。勃起不全はほぼ必発ですが、再発リスクが低い方では勃起神経を温存する術式も可能です。

以前開腹で前立腺全摘除術を行っていた時は出血が多く侵襲が高い手術であったのでは75歳ぐらいまでの方が適応となっていましたが、RARPになり出血なくできるようになったので80歳の方でも元気な方は適応としています。但し下腹部の腸などの手術の既往、緑内障、重い心肺疾患などのある方では手術はできません。

手術の利点としては、完全にがんを取り除くことができ病気の治癒が望めることです。PSAも速やかに下降することが期待できます。

当院での手術成績

2012年10月から2019年7月までに403例のRARPを施行しました。
初期に開腹手術に移行した1例を除いた402例について周術期合併症と1年以上の経過観察が可能であった310例についてがん治療成績を検討しました。

手術合併症
93例(23%)に合併症を認めました。

RARP合併症

鼠径ヘルニアが最も多く12%にみられましたが、そのほかの合併症は少なく1%以下がほとんどで輸血は0.4%のみでした。
尿失禁については術後6か月で95%の方が、紙おむつ1枚以下となって見えます。

術前リスク分類別PSA非再発率

術後はPSAの値が0.2ng/ml以下が再発なしとされています。PSA>0.2ng/mlとなった方が再発となります。低リスクだとほぼ再発は0ですが、やはり高リスクだと再発は多くなります。