脳神経外科 もやもや病専門外来

診療・各部門

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高須 俊太郎
脳神経外科部長

 JCHO中京病院(愛知県名古屋市南区三条1-1-10)では、もやもや病専門外来(毎週火曜日午後、担当医:高須俊太郎)を開設しています。担当医はもやもや病に対して、発症早期より積極的な手術(血行再建術)を行うことによって、長期的な予後を改善できることを示してきました。2018年以降は年間40-50件前後の手術を行っています(図1)。豊富な治療経験を基に、もやもや病の患者さんが安心して治療を受けられるように、最善を尽くします。
 もやもや病と診断された場合や、もやもや病の疑いがあると判断された場合は、当院地域医療連携・相談室 Tel:(052)691-6886 Fax:(052)691-6053 にご相談の上、「もやもや病専門外来」の予約をしてください。
 すでに検査を行われている場合は画像などの資料を持参していただくようにお願いいたします。

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1.もやもや病とは?

 もやもや病とは、脳を栄養する太い血管(内頚動脈)が徐々に細くなり、最終的にはつまってしまう病気です。
日本を始めとした東アジアに多い病気です。

 内頚動脈が前大脳動脈と中大脳動脈に別れる部分(内頚動脈終末部)が細くなっていくのが特徴で、不足した血流を補うために新しく細い動脈(この細い血管が脳血管撮影という検査で煙がもやもやしているように見えたため、もやもや病の名前がつきました)が発達していきます(図2)。

 内頚動脈が細くなると、脳を栄養する血流が不足するため、脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こします。
 また、新しく発達した細い動脈は非常に脆いので、血管が破れて脳出血を起こすこともあります。

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小児と成人で異なる症状が特徴

 もやもや病はやや女性に多い病気で、約10-20%に家族内発症(特に兄弟に多いと言われています)が認められます。
もやもや病は、小児発症(6歳前後に多い)と成人発症(40歳前後に多い)とで症状の出方が異なります。

 小児発症では、一過性脳虚血発作で発症することがほとんどです(図3)。
 一時的に脳血流が不足することによって、片側の手足の麻痺や言葉の出にくさが出現する発作です。
 過換気の状態が症状を誘発するとされ、典型的には「ラーメンを息でさまそうとした時」や「笛を吹いている時」などが挙げられますが、他に激しく泣いた後に起こることもあります。
 この状態からさらに脳への血流が低下すると、脳梗塞になってしまいます。脳梗塞になってしまうと、症状が後遺症として残ってしまうことがあります。
 1歳や2歳の小さい子供では、痙攣発作で発症する場合もあり、診断がなかなかつかないことがあります。

 成人発症では、脳出血で発症する場合と、脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症する場合が、おおよそ半分ずつです。
 脳出血は、脳の血流を補うために発達した「もやもや血管」が破れることによって起こります(図3)。
 突然の激しい頭痛、嘔吐や手足の麻痺などで発症します。重症例では生命に危険が及ぶこともあります。

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2.もやもや病に対する治療

 内頚動脈がつまっていく原因は分かっておらず、これを防ぐことはできません。
 それに代わり、手術(血行再建術)で脳への血流を増やすことによって、脳梗塞を防いだり、もやもや血管を減少させることによって脳出血を防いだりすることができます。
 症状が出現している場合や、検査で脳血流が低下している場合は、早期に血行再建術を行うことで、症状を改善し、長期的な予後を改善することができます。
 一方、症状がなかったり、脳の血流が正常であったりする場合は、まずは経過観察を行い、手術の必要性を判断します。

もやもや病に対する手術方法

 手術には、直接吻合術と間接吻合術があります。

 直接吻合術は頭皮にある血管(浅側頭動脈)を脳の表面の血管(中大脳動脈)に直接つないで、血流を増やす方法です。
脳の表面の血管は1mm程度の細い血管なので、顕微鏡を用いて非常に細い糸(太さ0.02mm)で縫い付けます。
血流を手術直後から増やすことができますが、過灌流症候群(一時的に血流が流れすぎてしまうことにより、一過性に症状が悪化すること)という合併症があります。

 間接吻合術は、頭部の皮下組織や筋肉を脳の表面に接着させて血流を増加させる方法です。
広範囲の脳の血流を改善することができますが、血流が増えるまでに1-3ヶ月かかることが問題になります。

 それぞれの欠点を補うために、両方の手術を組み合わせて同時に行う複合的血行再建術という方法があります。

3.当院でのもやもや病に対する治療

 当院では、患者さん一人ひとりに合った最適な手術方法を選択しています。主に行っている方法は、直接吻合術と間接吻合術を組み合わせた複合的血行再建術です(図4)。
 直接吻合術と間接吻合術を同時に行うことによって、お互いの欠点を補うことができます。
 また、患者さんごとの血流低下の部位を考慮し、直接吻合を行う部位や、間接吻合術の範囲を決定することによって、最も適した血行再建術を行っています(テーラーメイド手術)。

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 もやもや病は小児期に発症することが多い病気です。
 担当医は日本小児神経外科学会認定医を取得しており、小児に対する手術経験も豊富です。
 1歳からもやもや病に対する手術治療を行っています。

 現在の手術法を行うようになった2015年以降で、担当医が執刀し、手術によって後遺症が残る合併症が起こったのは1.3%でした(2022年3月現在)。
 現在では手術の際に、髪の毛もできるだけ残すようにしています。
 髪の長い方であれば、退院時には手術の創はほとんど目立ちません(図5)。

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4. もやもや病の予後

 脳梗塞や一過性脳虚血発作で発症したもやもや病については、手術を行って脳の血流を増やすことで、脳梗塞を防ぎ、一過性脳虚血発作をなくすことができます。
 また、脳出血で発症したもやもや病に対しても、手術を行うことで再出血の危険性を減らすことができます。

 術後に生活上の制限や、運動制限はありません。
 ただし、喫煙や高血圧は将来的に脳卒中を起こす危険性があります。タバコは絶対にやめてください。
 また、血圧が高い場合は、早めに降圧剤を内服することが重要です。

最後に

 今回ご紹介した通り、当院では経験豊富な専門医が、患者さん一人ひとりに最適な治療法を選択して行っております。
もやもや病と診断された場合や、もやもや病の疑いがあると判断された場合は、当院地域医療連携・相談室 Tel:(052)691-6886 Fax:(052)691-6053 にご相談の上、「もやもや病専門外来」の予約をしてください。
 すでに検査を行われている場合は画像などの資料を持参していただくようにお願いいたします。

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