卵巣がん

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卵巣がんとは

 卵巣にできる悪性腫瘍です。卵巣にできる腫瘍は大きく良性・境界悪性・悪性にわけられ、卵巣腫瘍のうち9割程度は良性ですが、悪性(がん)の場合があります。卵巣はお腹の中に存在するため腫れても症状がでにくく、卵巣がんの多くは、腹膜播種というお腹に広がった状態となったりお腹に水がたまったりして、進行した状態で発見されます。また子宮がんのように体の外から組織をとることができないため、卵巣がんは多くの場合、手術によって診断が行われます。主な治療は、できるだけ腫瘍を摘出する手術と、抗がん剤です。卵巣がんは抗がん剤が比較的効きやすいがんとされています。近年、卵巣がんに対して分子標的薬が導入され、治療効果予測や有害事象によって治療薬を使い分ける個別化医療が進んでいます。今後も卵巣がん治療の進歩が期待されます。

当院における卵巣がんの診断と治療について

 卵巣がんが疑われた場合、MRIやCTで腫瘍や転移の有無を評価した後、手術によって卵巣や腫瘍の一部を切除し、顕微鏡で確認する組織学的診断を行います。卵巣がんの可能性が高く、完全切除が可能と予想される場合などには、手術中に迅速組織診断を行い、がんの診断がついた場合に引き続き完全切除を目指す手術を行うことがあります。初回の手術で腫瘍を取りきることが不可能な場合は、抗がん剤治療により腫瘍を縮小させたのちの手術を目指します。この場合でも、後述するコンパニオン診断のため、可能であれば治療開始前に腫瘍組織の一部を採取しておくことが重要となります。その際には、手術による体の負担を軽減する目的で、腹腔鏡下手術による組織採取を行い、治療選択の判断を行います。再発した場合もまずは手術での切除が可能か検討し、抗がん剤治療につなげます。再発時の抗がん剤治療は、薬の選択肢が複数ある場合が多く、有害事象や治療のスケジュールを加味して患者さん一人一人にあった治療を提供できるよう努めています。

当院の卵巣がん治療の実績について

 当院では、毎年5例程度の新規卵巣がん患者さんの治療を行っています。

卵巣がんのトピックス

 卵巣がんの治療の進歩は著しく、コンパニオン診断による治療の個別化が可能となってきました。ある治療薬が患者さんに効果があるかどうか、治療の前にあらかじめ検査することを、コンパニオン診断といいます。卵巣がんにおいては、BRCA検査や相同組換え修復欠損(HRD)検査がそれにあたり、検査によってオラパリブやニラパリブといった薬剤の使用を決定します。生まれつきBRCA遺伝子変異があり乳がんや卵巣がんのリスクが高い、遺伝性乳がん卵巣がん症候群では、遺伝子変異が50%の確率で子どもに受け継がれます。検査を受ける前に検査による影響について十分知っておく必要があります。