呼吸器内科

診療・各部門

対象疾患

長引く咳・痰、呼吸困難、胸痛といった症状がある時や、健康診断で胸のX線写真・肺機能の検査・痰の検査異常を指摘された時に、その原因を調べて、対処法や治療法を提案・施行します。具体的には、肺がん・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・気管支喘息・肺炎・間質性肺炎・気胸や肺結核・肺非結核性抗酸菌症・縦隔腫瘍・胸膜中皮腫などの疾患を担当する診療科です。

主な対象疾患と治療

肺がん

近年、肺がん治療は大きく進歩し、従来の抗がん剤に加え、患者さんの免役の力を使う抗がん剤や、特定の遺伝子変異にターゲットを絞った抗がん剤が使用できるようになりました。
分子標的薬は特別ながん遺伝子異常をもつ患者さんのみに使用できる抗がん剤ですが、標的となる遺伝子異常を見つけるには、一度にたくさんの遺伝子を調べる検査(遺伝子パネル検査)が有用です。当院では通常診療での検査に加えて、臨床試験「LC-SCRUM」へ参加することで、様々な遺伝子検査を行うことが可能です。標準治療施行後に再発してしまった患者さん(終了が見込まれる方を含む)に対する「包括的ゲノムプロファイリング検査」、血液検体を用いた遺伝子パネル検査も実施しております。当院では新規抗がん剤の治験も実施しております。詳しくは下記一覧をご覧ください。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)

慢性閉塞性肺疾患(COPD)はタバコ煙などの有害物質の長期的な吸入によって引き起こされる病気で、肺気腫と呼ばれることもあります。咳や痰、息切れなどの症状がみられ、悪化すると酸素療法が必要となる場合もあります。 日本人の500万人以上がCOPDに罹患しているという報告もあり、多くのCOPD患者が診断されず、見過ごされています。喫煙歴がある方で上記の症状に身に覚えのある方は一度、呼吸器内科の受診をお勧めします。

気管支喘息

気管支喘息は、何らかの原因による炎症が生じて空気の通り道が狭くなり、咳が続いたり、息苦しくなったりする病気です。感冒などをきっかけに発作を生じ、喘鳴(「ぜーぜー」、「ヒューヒュー」といった呼吸音)が特徴的です。ペットなどに対するアレルギーが原因となる場合があり、アレルゲンを避けることも大切です。喘息の治療は吸入薬が中心で、炎症を抑えるステロイドや気管支を広げる薬剤が用いられます。
この地域では喘息患者さんが多く、当院は多数の重症患者さんの診療を行っております。治療にもかかわらず発作を繰り返してしまう患者さん、ステロイド内服薬を常用するような難治性喘息の患者さんも一度ご相談ください。

間質性肺炎(かんしつせいはいえん)と肺線維症(はいせんいしょう)

肺では、吸い込んだ空気は肺胞と呼ばれる小さな袋に入り、そこから酸素が「間質(かんしつ)」とよばれる組織を通って血管に入ります。間質性肺炎は、何らかの原因でこの間質に炎症が起こる疾患です。原因は多岐にわたり、関節リウマチなどの自己免疫疾患、薬の副作用、カビなどに対するアレルギーなどがありますが、多くは特定の原因がない特発性間質性肺炎(とくはつせいかんしつせいはいえん)と診断されます。
肺線維症(はいせんいしょう)は間質性肺炎の中で最も多く、徐々に、肺が硬くなり、肺機能が低下していく難治性の疾患です。肺線維症はこれまで有効な治療がありませんでしたが、近年、抗線維化薬という薬剤が使用できるようになりました。高額な薬剤ですが、特定難病疾患の認定を受けることで治療費の公費助成を受けられる場合があります。希望があれば医療相談員が治療費や認定申請について説明いたします。

禁煙治療

喫煙は肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のみならず、食道がんなどの様々ながん、脳卒中や虚血性心疾患、胃潰瘍といった疾患と関連があります。また肌の老化を促進することも知られています。喫煙者の家族が肺がんになりやすくなる、子供が喘息を発症しやすくなる、など受動喫煙により周りの人の健康を害してしまいます。タバコ煙に多く含まれるニコチンは一部の麻薬よりも強力な依存性をもつことが知られており、タバコをやめられない方の多くは「ニコチン依存症」です。麻薬と同じように、いくら努力してもニコチン依存症から抜け出せない人もいます。そのような人には禁煙外来をおすすめします。禁煙外来では禁煙補助薬を使用してタバコを吸いたいという気持ちや、タバコを美味しいと思う気持ちを押さえて、楽に禁煙ができます。タバコをやめたいけど、どうしてもやめられない方、是非ご相談ください。

気管支鏡検査

肺の病気を診断する場合、胃カメラのように内視鏡を使用することがあります。この内視鏡を気管支鏡といい、肺の組織や細胞、病原菌を採取するために使われます。当院では、超音波を利用して病変を同定したり、特殊な機器により組織を凍結させて生検するなど、様々な手法を用いて、より正確な診断ができるようにしています。気管支鏡は苦しい検査ですが、当院では鎮静剤を使用するため、ほとんどの患者さんが検査は苦しくなかったと、おっしゃられます。

治療実績

診療実績表 (2019年)

項目 実績データ
外来患者数 14,719人
項目 実績データ
退院件数(入院患者数) 1130人
項目(疾患別件数) 実績データ
間質性肺炎 74件
結核 19件
肺癌 426件
中皮腫 8件
喘息 40件
COPD 69件
項目 実績データ
新規肺癌登録者数 142人
項目 実績データ
気管支鏡総数 295件
EBUS-TBNA 31件
EBUS-GS 113件
局所麻酔下胸腔鏡 5件
気管支充填術 3件

当院呼吸器内科で実施中の治験、臨床試験一覧

治験

治験名 対象疾患 期間 責任医師
AVT-399 c-Met陽性非小細胞肺がん 2024/05まで 浅野周一
治療歴を有するc-Met陽性非小細胞肺癌患者を対象としてTelisotuzumab Vedotin(ABBV-399)の
安全性及び有効性を検討する第II相非盲検試験
OBERON COPD 2025/06まで 浅野周一
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の増悪歴を有する症候性のCOPD 患者を対象として2 種類のTozorakimab 投与レジメンの有効性及び安全性を評価する第III 相、多施設共同、ランダム化、二重盲検、長期投与、並行群間比較、プラセボ対照試験(OBERON
KALOS 喘息 2023/10まで 浅野周一
コントロール不良な喘息を有する成人及び青年患者を対象に、ブデソニド+グリコピロニウム+ホルモテロールフマル酸塩水和物定量噴霧式吸入エアゾール剤(MDI)の有効性及び安全性を、ブデソニド+ホルモテロールフマル酸塩水和物MDI及びSymbicort®加圧式MDIと比較する、多施設共同、24~52週間の可変期間投与、ランダム化、二重盲検、ダブルダミー、並行群間比較試験(KALOS

臨床研究

アジア人の非小細胞がんにおける個別化医療の確立を目指した
遺伝子スクリーニングとモニタリングのための
多施設共同前向き観察研究 ( LC-SCRUM-ASIA)
2019/4~2025/3 国立がん研究センター 東病院
非小細胞肺癌における薬物治療耐性後の個別化医療の確立を目指した
遺伝子スクリーニングとモニタリングのための
多施設共同前向き観察研究(LC-SCRUM-TRY)
2021~2030/09/30 国立がん研究センター 東病院
ALK陽性進行期非小細胞肺がんに対するアクレチニブ治療後
二次または三次治療としてのグリブチニブ
多施設共同前向き観察研究(WJOG11919C):ABRAID試験
2020/12/28~2024/12/28 国立がん研究センター
Cell free DNAを用いた次世代シーケンサーによる
multiplex遺伝子解析の有効性に関する
前向き観察研究(LC-SCRUM-Liquid)
2020/6/29~2027/12/11 国立がん研究センター 東病院
多分野合議による間質性肺炎診断に対する
多施設共同前向き観察研究
(Providing Multidisciplinary ILD diagnoses) (PROMISE study)
2020/10/1~2035/12/31 名古屋大学
特発性間質性肺炎の前向きレジストリの構築と
インタラクティブMDD診断システムを用いた
診断標準化に基づく疫学データーの
創出ーAI診断システムと新規バイオマーカーの開発(IBIS study)
2020/10/19~2022/10 浜松医科大学
COVID19パンデミックによる活動制限がもたらす
慢性閉塞性肺疾患への影響に関する研究 (ICARD試験
2021/10/28~2025/03/31 名古屋大学
新型コロナウイルス感染症の凝固異常の病態解明と
重症化予測に関する研究 (ROTEM試験)
2021/8/27~2025/12/31 名古屋大学
COVID-19 REGISTRY Japan 2021/7/22 ~ 国立国際医療研究センター
入院を要する市中肺炎、院内肺炎、人工呼吸器関連肺炎
に対する臨床観察研究(CAPTAIN study)
2020/6/29~2023/3/1 名古屋大学

その他

名古屋市南部の大気汚染呼吸器疾患診療を担当してきた歴史があり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支喘息の診療実績が豊富です。がん拠点病院として、肺がん診療も重点化しており、呼吸器外科・放射線科・緩和ケアチームとの連携による包括的取り組み、また、がんセンター・名古屋大学付属病院等の他施設との連携診療も積極的に行なっています。

医師スタッフ紹介

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外来担当一覧

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当科の学会施設認定

  • 日本呼吸器学会教育認定施設
  • 日本呼吸器内視鏡学会専門医関連認定施設
  • 日本アレルギー学会教育認定施設
  • 日本禁煙学会認定教育施設