診療・各部門
消化器内科の概要
当院は名古屋市南部医療圏の地域医療支援病院、がん診療連携拠点病院であり、その中で当科は消化管、肝臓、胆膵を始め救急医療から緩和医療を含めたがん医療まで幅広く診療にあたっています。南区を始め周辺の市区町村の患者さんが来院し、また「患者支援センター(旧:地域連携室)」を介してそれぞれの地域の医療施設と連携をとっています。消化器内科の担当する領域は腹部一般であり、いわばプライマリケア的な症状、疾患から、がんや炎症性腸疾患、あるいはICU管理を必要とする重篤な疾患まで、臓器的にも症状的にも幅広い領域となります。したがって診療・治療においていわゆる内科的な診察から、昨今の内視鏡治療などを始めとした比較的浸襲的な手術、手技などの治療も行うことのできる領域でもあります。当科では消化器領域全般にわたり、外科や放射線科、病理診断科を始めとする他科、多職種のスタッフと協力して、患者、地域の医療者にとって、より良い診療、治療を行い、患者さん一人ひとりの問題解決に向けて努力をしています。
2026年7月27日に本館4階に新内視鏡センターがオープンいたしました。これまでの内視鏡室の約8倍の敷地面積に、これまで病院の各部門の協力で成り立ってきた機能を集約しました。
消化器内科の特徴
一般診療と専門領域
当科では腹部領域全般にわたる幅広い診療を行っております。また日本内科学会、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会、日本肝臓学会、日本臨床腫瘍学会、日本膵臓学会の認定施設あるいは指導施設です。平日は専門医による外来診察を行い、また休日、夜間の救急外来からも、救急担当医の要請や必要に応じて専門医が24時間、365日対応が可能です。消化管出血の止血術、化膿性胆管炎や閉塞性黄疸の対応、ドレナージ、腸閉塞(イレウス)への対応も緊急、準緊急的に行うことができます。
検診・早期発見
当院では健康管理センターを併設しており、通常のドック内での内視鏡検診や名古屋市のワンコイン検診も行うことができます。また肝胆膵の領域では、通常の超音波検査だけでなくソナゾイドを用いた造影超音波、Shear Wave Elastography (SWE)を用いた肝硬度測定、造影CT、EOBプリモビスト用いたMRIを始めとする多彩な画像診断を用いて、MASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)、肝がんや胆膵領域のサーベイランス、精査を行うことができます。
地域連携・病診連携
「患者支援センター」を通じて、外来診察、上下部消化管内視鏡検査、超音波やCT、MRIなどの画像検査の予約をすることができます。初診の場合は開業医あるいは初療医の先生からの情報提供書をお持ちいただくと予約がスムーズです。精査の結果、専門的な治療が必要なければ、紹介元に逆紹介させていただきます。その際には詳細、かつ丁寧に精査結果や注意点を情報提供させていただきます。また健康管理センターでの検診で消化管要精査の場合、消化器内科外来診察、場合により消化管内視鏡検査を予約することができます(詳しくは中京病院健康管理センターへお問い合わせください)。
がん診療
消化管がんに対する内視鏡的治療(消化管の早期がんに対する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)、進行がんに対するステント治療など)にも積極的に取り組んでいます。また肝がんに対するラジオ波焼灼療法(RFA)、経カテーテル的動脈塞栓術、がん薬物療法など非外科切除の治療全般を行うことができます。当科ではがん薬物療法専門医、がん治療認定医のもと分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害剤を含んだがん薬物療法、そして外科、放射線科、緩和支持治療科と協力して集学的な治療、ケアを行っています。定期的に多職種が参加するキャンサーボードを行い診療方針の検討にあたっています。
インフォームドコンセント
幅広い領域に対して、時に浸襲的な検査、治療も行うことがあり、患者さんご本人やご家族の方々に丁寧な情報提供、説明を行い、御納得いただいた上で最善の策を講じていきます。特にがんを始めとしてセカンドオピニオンも受け付ける事が出来ます。詳しくは「患者支援センター」にお問い合わせください。
消化器内科の診療内容
消化管部門
当部門では、食道・胃・小腸・大腸疾患に対して、専門性の高い診断・治療を行っています。通常内視鏡に加え、経鼻内視鏡、拡大内視鏡、狭帯域光観察(NBI)、超音波内視鏡などを用い、消化管腫瘍のスクリーニングから範囲診断・深達度診断まで幅広く対応しています。
治療面では、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)や内視鏡的粘膜切除術(EMR)などの高度内視鏡治療を積極的に行い、早期消化管癌に対する低侵襲治療に取り組んでいます。また、大腸CT検査(CT colonography)を導入し、内視鏡施行困難例、治療前評価、治療後サーベイランスなど多様な診療ニーズに対応しています。
小腸疾患診療にも力を入れており、小腸シングルバルーン内視鏡を用いた専門的診療を行い小腸出血に対する精査・内視鏡止血術、小腸腫瘍、血管性病変、炎症性疾患などの診断・治療に対応しています。
当院は地域がん診療連携拠点病院として、消化管がんに対する高度ながん診療体制を整備しています。内視鏡診断・治療に加え、外科、放射線科、病理診断科などと密接に連携し、診断から治療、治療後フォローアップまで一貫した集学的がん診療を提供しています。
また、当院は地域における炎症性腸疾患(IBD)診療拠点として、潰瘍性大腸炎およびクローン病に対する専門診療にも力を入れています。内視鏡、画像、病理診断を組み合わせた総合的な病態評価に加え、CRP、便中カルプロテクチン、LRGなどのバイオマーカー測定を活用し、疾患活動性評価や治療効果判定を行いながら、患者さん一人ひとりに適した治療戦略を提供しています。
薬物療法では、5-ASA製剤、免疫調節薬に加え、抗TNF抗体、抗IL-12/23抗体、抗IL-23抗体、抗インテグリン抗体などの生物学的製剤、JAK阻害薬、S1P受容体調節薬などの高度薬物療法に対応しています。難治例や治療抵抗例にも対応し、必要に応じて外科、放射線科、病理診断科、栄養部門など多職種と連携し、長期予後改善を見据えた集学的診療を行っています。
さらに、IBD関連腫瘍サーベイランス、小腸病変評価、術後管理、病診連携による長期フォローアップにも積極的に取り組んでいます。
がん診療のみならず、炎症性腸疾患、機能性消化管疾患をはじめとする幅広い良性消化管疾患に対して、専門性とチーム医療を活かした包括的な診療を提供しています。
肝臓
B型、C型を始めとするウイルス性肝炎についてはインターフェロン(IFN)治療の時代から多数例の症例経験があります。特にC型肝炎の治療については、IFNを使わないいわゆるIFNフリー療法(直接作用型抗ウイルス剤;DAA)治療に積極的に取り組んでいます。近年注目を集めるMASH(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis)の診療にも対応しています。肝がんの治療ではラジオ波焼灼療法(RFA)、経カテーテル的動脈塞栓術など非外科切除の局所治療全般を行うことができ、分子標的薬や、免疫チェックポイント阻害剤による進行肝がんの治療にも取り組んでいます。2010年代から腫瘍増殖過程や腫瘍血管の新生を抑制する機序を持ついわゆる分子標的薬が保険収載され、従来の局所療法でコントロールができない患者さんに使用されてきました。そして2020年末には免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が保険収載され、現在進行肝がんの患者さんを中心に臨床で使用されています。大学を始めとする施設とも協力してこうしたがん薬物療法、あるいはウイルス駆除後の発がんサーベイランス、肝炎ウイルス、及び宿主側の因子について研究協力を行っています。
胆・膵部門
胆石症、胆管炎、閉塞性黄疸、膵炎、膵腫瘍などの胆・膵疾患に幅広く対応しています。腹部超音波検査、CT、MRIに加え、EUSやERCPによる精密検査・内視鏡治療を行っています。膵癌や胆道癌は早期発見が重要な疾患であり、その診断にも力を入れています。また、閉塞性黄疸や胆道感染症など緊急を要する患者さんにも対応できる体制を整えています。関連診療科と連携しながら、患者さん一人ひとりの状態に応じた治療を提供しています。
■超音波内視鏡検査(EUS:Endoscopic Ultrasonography)
先端に超音波装置が付いた内視鏡を用いて、胃や十二指腸の中から膵臓や胆管・胆嚢を詳しく調べる検査です。体の外から行う超音波検査と比べて、より近い距離から観察できるため、小さな異常も見つけやすいのが特徴です。膵腫瘍や消化管粘膜下腫瘍などに対しては細い針で病変の一部を採取し(EUS-TA)、詳しく調べることができます。また、感染した膵嚢胞や胆管・胆嚢の病気に対して、内容物を排出する治療(ドレナージ術)を行うことも可能です。
また、当院は2021年10月よりがんゲノム医療連携病院に指定されています。治療前のEUS-TAから得た組織検体がゲノム医療の一助となる可能性があります。
■内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP:Endoscopic retrograde cholangiopancreatography)
内視鏡を十二指腸まで進め、胆管・膵管の出口(乳頭)から細いチューブを入れて造影剤を流し、胆管・膵管の異常を詳しく調べる検査です。レントゲンで確認しながら行うことで、胆管や膵管の狭窄や結石、腫瘍などの評価が可能です。胆汁や膵液を採取したり、病変部の細胞や組織を採取することもできます。また、胆管炎や閉塞性黄疸に対して、胆汁の流れを良くする治療(胆道ドレナージ術)を行うことも可能です
新内視鏡センターについて
当院の内視鏡部門は、健診やスクリーニングから始まり、放射線や超音波を併用、駆使して、上・下部消化管、胆・膵、および呼吸器分野における様々な診断・検査・治療を行っています。2026年7月27日に、本館4階、新内視鏡センターがオープンしました。従来の内視鏡室の約8倍に拡大したスペースに、これまで病院の各部門の協力で成り立ってきた機能を集約しました。センター内には、完全個室化した非透視下検査室が4室、透視下検査室が3室、内視鏡センター固有のリカバリールーム、それに上部、下部、気管支鏡のための前処置室が設置されました。透視下検査室には、Cアーム型の透視装置の部屋もあり、より安全かつ正確な検査、処置が可能となりました。また陰圧装置を設置する部屋もあり、医療従事者や他の患者さんへの感染リスクを低減する工夫がなされています。
こうした検査室の個室化充足とともに、ナースステーションの配備と、リカバリールームを含む各検査室へのモニター設置により、検査や患者さんの状況の把握や共有が速やかにでき、より安全管理に配慮できるようになりました。また、患者さんや健診者の高齢化に対応して車いすトイレ、共同トイレの充実化を図るとともに、ストマ増設された患者さんのためのオストメイト対応のトイレも設置しております。さらに、これまでなかったバックヤードスペースができることで、患者さんの動線と機器の搬入・搬出の動線の完全な分離も可能となりました。また他部署との連携では、2026年9月24日より健康管理センターが本館の1階に移設される、内視鏡センターへもエレベーターで上がるだけでアクセスできるようになりこれまでよりも便利に利用いただけるようになりました。
① 待合スペース
受付前の廊下にオフホワイトを基調とした明るい冷暖房完備のゆとりあるスペースを確保しました。
② 受付・モニタリングスペース
検査室や前処置、待機場所などの案内と同時に、各検査室や前処置、リカバリーの様子を集約してモニターでき、また大腸CTの読影や電子カルテでの業務もできるスペースとなりました。
③ 上部前処置スペース
拡大した室内にシート数を増やし、リクライニングシートも備えたスペースを完備しました。
④ リカバリールーム
鎮静後の経過観察は、これまでは各科の処置室を利用しておりましたが、今回内視鏡専用の6床を確保して対応可能となりました。
⑤ 非透視検査室
完全個室化した4室となりました。透視検査室とともに内視鏡などの医療機器の動線をバックヤードでつなぐことにより、患者さんの動線と完全に分離することが可能となりました。また超音波を使用したラジオ波焼灼療法などの処置にも対応できます。
⑥ 透視検査室
従来の放射線部門で行っていた透視併用下の検査により時間をかけたり、充実させたりすることができる3室となりました。特に1室には新型のCアームの透視装置が設置され、より精度の高い気管支鏡やERCPなどの検査が行えるようになりました。
⑦ 大腸前処置スペース
これまで別棟にあった前処置もモニタリングスペースのすぐ横に移動し、患者さんの状況の把握、スタッフの動線の改善や業務の効率化に役立っています。
⑧ 洗面・トイレスペース
前処置や検査後の洗面、トイレもセンター内に十分確保されました。車いすトイレ、共同トイレの充実化を図るとともに、ストマ増設された患者さんのためのオストメイト対応のトイレも設置されました。
診療実績
(2025年1月~12月)
| 検査・治療 | 件数 |
|---|---|
| ◆上部消化管内視鏡(総数) | 5,582 |
| 止血術 | 31 |
| 上部ESD | 25 |
| EVL/EIS | 14 |
| 消化管ステント | 17 |
| 鎮静内視鏡(上部) | 289 |
| ◆下部消化管内視鏡(総数) | 1,965 |
| 内視鏡的ポリープ切除 | 832 |
| 下部ESD | 13 |
| 大腸ステント | 13 |
| 鎮静内視鏡(下部) | 183 |
| ◆小腸内視鏡(総数) | 6 |
| ◆ERCP系(総数) EST 91件、EPBD/EPLBD 56件、EBD/ERBD 72件、砕石/採石 95を含む) | 349 |
| ◆EUS(総数、FNAを含む) | 90 |
| ◆RFA | 22 |
| ◆TACE | 4 |