診療・各部門
腰部脊柱管狭窄症はロコモティブシンドロームの要因の一つであり、骨の変形、靭帯の病的肥厚、変性すべり症などが原因で、腰椎の真中にある神経の束が通る管(脊柱管)が狭くなり、下肢の痛みや痺れを起こします(図)。50歳代から徐々に増え始め、60~70歳代に多くみられます。高齢者の10人に1人は腰部脊柱管狭窄症であり、推定患者数は約580万人といわれています。
この病気では腰痛はあまり強くなく、安静にしている時にはほとんど症状はありませんが、背筋を伸ばして立っていたり歩いたりすると、ふとももや膝から下にしびれや痛みが出て歩きづらくなり、休むと症状が治まりまた歩けるようになるのが特徴的な症状です。このように歩行と休息を繰り返す状態を「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」と言います。間欠性跛行は、動脈硬化によって血流が不足する閉塞性動脈硬化症によっても引き起こされるので、どちらが原因なのかを確認する必要があります。また、脊柱管は前かがみで少し拡がるので、自転車や買い物カート等の使用(前屈みの姿勢)では症状が出にくいのも特徴の一つです。一方、動脈の閉塞による場合は、姿勢に関わらず症状が出現し、休めば痛みは治まります。
治療に関しては、症状が軽い場合には、理学療法、コルセット、神経ブロックや脊髄の神経の血行を良くする薬などで症状が改善することもあります。しかしながら保存療法でも効果が得られず、歩行距離が短くなって日常生活に支障をきたしたり、筋力の低下や排泄障害といった症状が現れたりしたときは、手術による治療を検討します。
脊椎・脊髄疾患は整形外科で治療を行う印象が強いかもしれませんが、欧米では脳神経外科で行う方が主流です。当院では脊椎・脊髄専門の脳神経外科医(前田憲幸、竹本将也)が神経学的知識及び脳の繊細な手術でトレーニングを積んだ顕微鏡手術の技術を駆使して、脊椎・脊髄疾患の治療・手術を行っております。痛みの度合いがそれほど強くないからと放置していると、病気が進行し日常生活に支障をきたすというリスクがあります。気になる痛みがある場合は、一度病院で診察を受けてみてはいかがでしょうか。