食道がん

診療・各部門

食道がんとは

 食道がんは高齢の男性、なかでもタバコを吸う人、お酒を多量に飲む人に多いとされています。食道はリンパ組織が豊富なので、食道がんはリンパ節転移が多いのが特徴です(患者さんの2/3の方にリンパ節転移を認めます)。さらに食道がんは他のがんに比べて発育速度が早いといわれ、急速に増大します。そのためがんの中でも悪性度が高いがんといわれてきました。しかし最近では、内視鏡治療、外科療法、放射線療法、がん薬物療法などの治療法が改善され、その効果もかなり良くなってきています。

当院における食道がんの診断と治療

 食道がんの初期は多くの場合無症状ですが、進行すると食道がしみるような感じや胸がチクチクする感じを自覚することがあります。その後は食事がつかえる、体重が減る、背中の痛み、咳が出る、声がかすれるなどの症状を認めるようになります。心配な方は、積極的に内視鏡検査を受けることをおすすめします。当院ではハイビジョン内視鏡と狭帯域光観察(NBI)を組み合わせることにより、食道がんの早期発見に成果をあげています。狭帯域光観察(NBI)とは、内視鏡から2つの短い波長の光を粘膜にあてることで粘膜の微細な表面構造や毛細血管をくっきりと写し出すという技術で、これまで通常の観察で見逃されていたような小さな食道がんも見つけることが可能となりました。また、食道がんが疑わしい際にはルゴールという特殊な染色液を用いたり、組織検査を行ったりしています。
 治療としては「食道癌診断ガイドライン 2017年版第4版(日本食道学会編)」に準拠して、内視鏡手術、外科的手術、放射線治療、がん薬物療法など、患者さんひとりひとりに応じた治療を選択しています。ごく早期の食道がんであれば、内視鏡的食道粘膜下層剥離術(ESD)を行います。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)とは、内視鏡を用いて専用ナイフで食道がんを剥ぎ取っていく方法であり、以前は切除できなかったような大きなサイズのがんや難しい部位に発生したがんでも切除できるというケースが多くなりました。ある程度進行した食道がんでは、外科療法、放射線療法、がん薬物療法を組み合わせて、これらの特徴を生かした集学的治療を行います。

 食道がんの外科手術は食道亜全摘、2領域(胸部、腹部)または3領域(頸部、胸部、腹部)リンパ節郭清を行う侵襲の大きな手術です。再建では胃を管状にして残存食道につないで再建する方法が通常とられますが、結腸を用いることもあります。 大変侵襲の大きな手術なので、補助がん薬物療法は術前に行い、その後手術を行う治療法を行っています。 また、最近では手術を胸腔鏡で低侵襲に行い、入院期間の短縮など良い結果が得られています。

当院の食道がん治療の実績(2021年)

内視鏡的食道粘膜下層剥離術(ESD) 5例

外科治療について

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
開腹(腹腔鏡)・開胸手術 3例 5例 5例 5例 0例
胸腔鏡手術 0例 0例 0例 1例 5例