診療・各部門
感染対策室
感染対策室とは
感染という言葉を聞くと薬の効きにくい耐性菌とか新型インフルエンザやノロウイルスを連想し、恐ろしい印象を持たれている方も多いと思います。感染対策室はこうした感染の危険から皆さん(患者さんや家族の方はもちろんですが、病院職員を含めて病院に出入りする全ての方)を守るために日夜活動している部署です。患者さんを実際に診療することは少ないので、どんな仕事をしているのか御存知ない方も多いと思いますが、病院を縁の下から支える、大変重要な役割を担っています。
主な仕事の内容
1) 感染対策チーム(ICTと呼ばれます)として、感染を起こす危険のある部署がないかどうか、院内を見回っています。
2) 入院中の患者さんから検出される耐性菌が増加していないかモニター(サーベイランス)し、検出状況を職員に知らせています。
3) 感染力の強い病原体が検出された場合や、耐性菌が増加した場合などには、緊急ラウンドを行い、必要な対策を実施しています。
4) 医師が特定の抗生物質を使用するときには感染対策室に報告書を出さなければなりません。感染対策室は抗生物質の乱用を防ぐために使用状況を監視しています。
5) 職員に感染対策教育を行っています。
院内感染とその予防法
1. 院内感染とは
病院や医院などの医療機関で患者さんや職員が細菌やウイルスなどの病原微生物(病気を起こす微生物)に感染することを院内感染と呼びます。
2. 病気を起こす微生物
1)微生物の全てが病気を起こすわけではありません
私たちの周りには多数の微生物が存在しますが、その大部分は病気の原因になることはありません。たとえば乳酸菌や麹菌は人間の役に立つ微生物です。また、ヒトの身体の中(鼻や口の中、大腸など)にも、常在菌と呼ばれる微生物が多数生息していますが、通常は病気の原因にはなりません。
しかし、ヒトに病気を起こす微生物が一部にあり、病原微生物と呼ばれます。
2)病原微生物
微生物が病気を起こす力(病原性)には、強いものから弱い物までいろいろあります。
病原性が強い微生物(例えばインフルエンザや麻疹など)は、身体の弱っている方はもちろんですが、健康な方にも感染し病気を起こします。
病原性の弱い微生物(例えば緑膿菌など)は、健康な方に病気を起こすことはありませんが、身体が弱っている患者さんでは重い病気を起こすことがあります。
3.院内感染の起こり方
ヒトが微生物に感染する経路には3種類あります。
1)接触感染
身の回りの環境には無数の微生物が存在しているので、誰の手にも多かれ少なかれ微生物が付着しています。その中には病原微生物が紛れ込んでいることもあります。
こうした手で傷口を触ったり、鼻や口の中に手を入れたりすることにより感染が拡がって行きます。このような拡がり方を接触感染と呼びます。
2)飛沫感染
インフルエンザなど呼吸器感染の患者さんでは、会話やくしゃみ・咳で放出される粒子(飛沫)により病原体が伝播します。これを飛沫感染と呼びます。
3)空気感染
患者さんの咳などで身体から飛び出し、その後しばらく空気中に浮遊している微粒子(飛沫核と呼ばれます)を吸うことで感染が起こります。患者さんとの距離が離れていても感染する危険がありますが、幸いなことに空気感染を起こす微生物は麻疹、水痘や結核に限られています。
4.感染の予防法
1)接触感染を予防するポイント
手を清潔にすることが第一です。
病室の出入りの前後、トイレの前後、食事の前など、こまめに手洗いをしましょう。
手洗いには、
① 院内の各所に設置してある擦り込み式の消毒液(ホエスミン、ヒビソフトなど)を手に擦り込む方法
② 石鹸と流水で手洗いする方法
があります。
普段は ①の擦り込み式の消毒液を使って 手をきれいにします。
しかし、排便・排尿のときや、傷口から滲み出た液とか血液、痰などに触れたときには、②の石鹸と流水の手洗いを行ってください。
2)飛沫感染を予防するポイント
マスクを着用することにより、飛沫感染を防ぐ事ができます。
また一般に飛沫感染は1m離れていれば安心と考えられています。1mの間合いも大切です。
3)空気感染を予防するポイント
感染源となる患者さん自身が注意していただくことが大切です。
咳やくしゃみのある患者さんは、必ずマスクを着用するようにお願いします。マスクを着けることで、病原体が周囲へ飛び散る危険性を減らすことができます。
5.保菌と発病
院内感染の予防法を説明してきましたが、残念ながら院内感染を完全になくす事は出来ません。その理由は本来ヒトと微生物は共生関係にあり、身体の中に微生物が住みついていることが普通にあるからです。
しかし、感染イコール発病ではありません。病気を起こす力の弱い菌(弱毒菌)に感染した場合には、通常は発病せず保菌状態となります。
もし感染が起こっても、細菌を持っているだけ(保菌)であれば治療をする必要はありませんし、むしろ保菌者の治療は有害になる場合があります。
ただし、MRSAという耐性のブドウ球菌を保菌されている方の場合には、除菌のために鼻に薬を塗っていただくことがあります。
症状が出た(発病)時は、速やかに適切な治療を開始します
6.院内感染対策サーベイランス
院内感染を早期に発見するためには、感染に関するデータを常に収集し分析することが大切です。(サーベイランスと呼びます) 当院は厚生労働省の院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフ ォーム(J-SIPHE)を活用して、積極的に院内感染対策に取り組んでいます。
7.外部医療機関との連携
地域連携と感染対策
当院では感染対策向上加算1を算定しており、地域の医療施設と感染に係る地域連携を行っています。当院との医療連携をお考えのご施設様は、こちらをご参照ください。(感染対策向上加算に係る医療機関連携ページ)
医療機関間・行政との連携
新興感染症などの発生時に都道府県の要請を受けて、入院の受け入れを行います。その 際に院内感染対策委員会の指示の元感染対策本部を設置し、医療フェーズに合わせて感染症病棟の設置や一般診療の制限を行い新興感染症への対応を行います。
外部コンサルテーション
近隣の医療施設、介護施設より中京病院代表電話もしくは感染対策室代表メールに院内感染対策に関する問い合わせがあった場合、ICTで協議しメールもしくは電話で対応いたします。
相互ラウンド
近隣の感染対策向上加算1を算定する施設同士で相互ラウンドを実施し、相互に院内感染対策の第三者評価を行います。
地域連携ラウンド
感染対策向上加算に係る地域連携を行う、感染対策向上加算2・3、外来感染対策向上加算施設へのラウンドを実施します。ラウンド結果からの評価を行い、連携と感染対策の強化を図ります。
スタッフ紹介
感染対策室には医師、看護師、薬剤師、検査技師、事務職などで構成されるスタッフが所属しています。
所属スタッフが保有している認定専門資格一覧
日本感染症学会専門医・指導医
感染コントロールドクター(ICD)
感染管理認定看護師(ICN)
感染制御認定臨床微生物検査技師(ICMT)
関連する学会施設認定
- 日本感染症学会認定研修施設