不整脈センター-不整脈の治療

診療・各部門

中京病院 循環器内科 不整脈センター設立
質の高い不整脈治療を患者様に提供するために
電話: 052-691-7151

不整脈の非薬物的治療

不整脈とは

不整脈とは、正常の心臓のリズム(洞調律)ではない状態のことです。不整脈には脈が速くなる不整脈(頻脈性不整脈)と遅くなる不整脈(徐脈性不整脈)があります。不整脈には数多くの種類があり、治療の必要のない良性のものから放置すると生命を脅かすものまでさまざまです。

不整脈による症状

不整脈は症状を伴うこともありますが無症状のこともあります。また、症状の程度には個人差があります。

代表的な不整脈の症状としては、以下のようなものがあります。

動悸:心臓のリズムが不規則になることにより、胸がドキドキする症状を感じることがあります。

息切れ:心臓が効率的に血液を送り出せなくなることにより、呼吸が苦しくなることがあります。また、心不全を合併した場合にも息切れが出現します。

めまい・失神:不整脈によって脳への血流が低下し、ふらつきや失神を伴うことがあります。

不整脈の検査と治療

不整脈を診断するための検査には、心電図や24時間ホルター心電図、運動負荷心電図があります。不整脈発作の頻度が少ない場合には、長時間記録可能なホルター心電図や携帯型心電計のほか、電極カテーテルを用いた心臓電気生理学検査を行って診断することもあります。また原因不明の失神の精査や心房細動の検出のため、植え込み型心電図モニターの植込みも行っています。

頻脈性不整脈の治療には、抗不整脈による薬物治療と非薬物治療(カテーテルアブレーション治療など)があります。治療方針については、不整脈の種類・頻度・患者様の状態を考慮し最適な治療方針を提案させて頂きます。徐脈性不整脈や心不全に対する非薬物治療にはデバイス治療(ペースメーカ、植込み型除細動器、心臓再同期療法)があります。

不整脈の非薬物治療

心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)

カテーテルアブレーションは、心房細動をはじめとした不整脈の治療方法で、カテーテルという細い管を血管から心臓内に挿入し、不整脈の原因となる部位を心臓の内側から高周波で通電することにより治療する非薬物的治療法です。当センターでは、できるだけ最新のカテーテルアブレーション技術を導入・使用し、有効で安全な治療を提供できるよう日々努めております。開心手術と異なり身体への負担が少なく、入院期間も3拍4日程度と短いため、早期に社会復帰することが可能です。

カテーテルアブレーションの対象疾患

心房細動

心房細動は、心房が1分間に約400-600回も収縮してしまう不整脈で、その結果心臓の収縮が不規則となり、血液を全身にうまく送ることができなくなってしまいます。心房細動の多くは動悸、息切れなどの症状を伴いますが、無症状のこともあります。心房細動を放置すると、脳梗塞や心不全を引き起こす危険性があるため、適切な治療を受けることが非常に重要です。

心房細動に対するカテーテルアブレーションは、薬物治療と比較して、高い洞調律維持率や生命予後の改善が期待できます。アブレーションは肺静脈隔離術(左右の肺静脈と左心房を電気的に隔離する方法)が基本ですが、心房の傷み具合や非肺静脈起源の有無によって追加の治療(線状焼灼、左房後壁隔離など)も行っております。心房細動の罹患期間によっては2回以上の治療が必要となる患者様もいらっしゃいますが、当センターではできるだけ1回の治療で根治できるよう取り組んでおります

また、当院では高周波によるカテーテルアブレーションの他に、バルーンによる冷凍アブレーション(クライオバルーンアブレーション)も積極的に行っております。クライオバルーンアブレーションは高周波アブレーションと比較して、患者様の疼痛が少ない・手術時間が短いといったメリットがあります。

これまで当院では、心房細動アブレーション中の麻酔は局所麻酔+浅鎮静(呼びかけると目が覚める程度の鎮静)で行っておりましたが、2023年5月から全身麻酔でのアブレーション手術も開始しました。全身麻酔をご希望される患者様は、担当医にその旨お伝えください。

図:高周波カテーテルアブレーションによる両側拡大肺静脈隔離術

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図:クライオバルーンアブレーションによる肺静脈隔離術

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心房粗動

心房粗動も心房細動と同様に、脳梗塞や心不全を引き起こす危険性があるため、適切な治療を要す不整脈です。

典型的な心房粗動の場合、三尖弁輪と下大静脈の間を線状にアブレーションすることで、高率に根治が望めます。非典型的な心房粗動の場合には、3次元マッピングシステムを用いて不整脈の回路を同定し、アブレーションすることで根治が可能です。

期外収縮(上室性・心室性)

期外収縮とは、心臓が通常のタイミングよりも早く収縮する不整脈です。期外収縮は健常人にも起こり多くは無害ですが、数が多い場合や連発する場合・自覚症状が強い場合・心不全を合併する場合などでは治療の対象となります。治療方法は、異常な電気信号を発生している場所を探し、その部位をアブレーションすることで根治を目指します。

図:心室性期外収縮に対するカテーテルアブレーション

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発作性上室性頻拍

症状としては、突然起こる動悸、めまい、息切れなどがあります。まれに失神を来たすこともあります。発作性上室性頻拍はカテーテルアブレーション治療により高い根治率が見込めます。

当院では、発作性上室性頻拍に対しては、冷凍凝固アブレーション(クライオアブレーション)を積極的に行っております。 高周波アブレーションによる治療は房室伝導障害(房室ブロック)を起こす危険性がありますが、クライオアブレーションは房室ブロックを100%回避可能です。一方で、クライオアブレーションは高周波アブレーションと比較して再発率が若干高いとする報告もありますが、当院におけるクライオアブレーションの再発率は極めて低く、良好な成績をおさめております。

図:冷凍凝固(クライオアブレーション)カテーテル

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心室頻拍

心室頻拍は、心室が異常に速く収縮する不整脈で、緊急性が高い危険な不整脈です。特発性心室頻拍は、心臓に異常がない方にも起こり得る心室頻拍で、比較的予後は良好ですが突然死のリスクもゼロではありません。一方、器質的心疾患を有する心室頻拍は、心筋梗塞や心筋症など心臓に基礎疾患がある方に起こる心室頻拍で、植込み型除細動器(ICD)植込みの適応となります。いずれの心室頻拍に対しても、生活の質の改善や生命予後の改善のためにカテーテルアブレーション治療を行うことがあります。

当院では、名古屋大学 因田恭也医師の指導のもと、難治性心室頻拍に対する心外膜アブレーション(心筋の外側からの焼灼)も行っております。

図:難治性心室頻拍に対する心外膜アブレーション

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小児の患者様に対するカテーテルアブレーション

当院では、安全に手技を行える基準を年齢5歳、身長115cm、体重15kgと設定し、吉田医師を中心に小児の患者様に対しても積極的に施行しております(必要に応じて上記基準以下でも治療を行うことがあります)。年間約20-30例の小児症例にカテーテルアブレーションを行っています。対象疾患はWPW症候群、房室結節回帰性頻拍などの上室性頻拍が多く、心室期外収縮や心室頻拍に対しても治療を行っています。

痛みを伴う手技は点滴だけで、その他の手技は麻酔下で行うようにしております。また、治療終了後はご両親のもとに帰って目が覚めるよう心がけております。

先天性心疾患術後の患者様に対するカテーテルアブレーション

近年、心臓手術成績の向上により、以前は困難であった先天性心疾患の患者様も救命できるようになってきました。術後長期にわたって健康に過ごされる方も増加する一方で、経過中に続発症として起こる不整脈がしばしば問題となります。当院では、そのような患者様に対しても積極的にアブレーション治療を導入し、患者様のQOL(生活の質)の向上を図っております。成人先天性心疾患の症例では、循環器内科と小児循環器科が協力し、互いの長所を活かしながら治療を行っています。

徐脈性不整脈・心不全に対するデバイス治療

当院はペースメーカ以外にもICDやCRTデバイスも植込みが可能で、すべてのデバイス治療に対応しております。

ペースメーカ

ペースメーカは、徐脈性不整脈(洞不全症候群、房室ブロック)に対する非薬物治療で、有症候や心不全を合併した徐脈の患者様が植込みの対象となります。ペースメーカは通常右心房と右心室の2ヵ所に電線(リードと呼びます)を留置します。2017年よりリードのないリードレスペースメーカも使用できるようになり、当院でも植込みが可能です。

ペースメーカを留置された一部の患者様において、ペースメーカによる非生理的な心室収縮が原因となり、植込み後に心不全を起こすことが報告されております。この課題を克服するため、より生理的な心室収縮を可能にする刺激伝導系ペーシングが近年注目されております。刺激伝導系ペーシングは、刺激伝導系(ヒス束・左脚・右脚)に心室リードを留置する方法で、植込み後の心不全予防や予後改善の効果が示されております。当院では、刺激伝導系ペーシングに早期から取り組んでおり、全国屈指の実績を誇っております。

植込み型除細動器(ICD)

植込み型除細動器(ICD)は、致死的な不整脈(心室頻拍、心室細動など)による突然死を予防するための植込みデバイスです。ICDは、致死的な不整脈を感知すると電気信号(抗頻拍ペーシング)や電気ショックで不整脈の停止を試みます。当院では、静脈を介してリードを留置するICD(TV-ICD)に加え、皮下植込み型のICD(S-ICD)も植込みが可能です。

図:S-ICD

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心臓再同期療法(CRT)

心臓再同期療法(CRT)とは、薬物治療抵抗性の重症心不全に対する非薬物治療(デバイス治療)です。左脚ブロックなど心室内伝導障害のある心不全の患者様が対象で、ペーシングにより伝導障害を是正して心機能や生命予後の改善を図る治療です。CRTは、通常のペースメーカと異なり3本のリードを心臓内に留置します。また、重症心不全の患者様は致死的不整脈の合併も多いため、除細動機能の付いたCRTデバイス(CRT-D)の植込みを行うこともあります。

図:植込みデバイス

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ボストンサイエンティフィックジャパン株式会社

日本メドトロニック