胃がん

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胃とは

 胃は袋状の器官で、みぞおちの裏あたりにあります。胃の入り口を噴門部といい、中心の部分を胃体部といいます。胃の出口は幽門部と呼ばれ、十二指腸へつながっています。 胃の壁は内側から、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と呼ばれる層になっています。 胃の主な働きは、食べ物をある時間とどめておいて、消化することです。

胃がんとは

 胃がんは、胃の内側を覆う粘膜の細胞が何かしらの原因でがん細胞となり、無秩序に増えていくことにより発生します。がんが大きくなるに従い、徐々に粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜へと外側に深く進んでいきます。がんがより深く進むと、漿膜の外側まで達して、近くにある大腸や膵臓にも広がっていきます。このようにがんが周囲に広がっていくことを浸潤といいます。 胃がんではがん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って、離れた臓器で増える転移が起こることがあります。また、漿膜を超えて腹腔内にがん細胞がまき散らされる腹膜播種が起こることがあります。

胃がんの症状

 胃がんは、早い段階では自覚症状はほとんどなく、かなり進行しても症状がない場合もあります。 代表的な症状は、胃の痛み、不快感、違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などです。また、胃がんから出血することによっておこる貧血や黒色便が発見のきっかけになることもあります。 食事がつかえる、体重が減るといった症状が出現することもあります。

胃がんの検査

 胃がんが疑われると「がんであるかを確定するための検査」を行い、次に治療方針を決めるために「がんの進行度を診断する検査」を行います。
1.がんを確定するための検査 内視鏡や胃X線検査(バリウム検査)などを行い、病変の有無や場所を調べます。内視鏡検査で病変部をつまんでとり(生検)、病理検査で胃がんかどうかを確定します。
2.がんの進行度を診断する検査 CT、MRI、PET検査で隣り合った臓器への浸潤、遠隔転移、リンパ節転移などを調べて胃がんの進行度を診断します。

胃がんの治療

 治療方法はがんの進行度や体の状態に合わせて検討します。 癌の進行度は「病期(ステージ)」としてⅠA期~Ⅳ期に分類されます。 「胃がん治療ガイドライン」に沿って治療を行います。 胃がんの治療法には内視鏡治療、手術、がん薬物療法などがあります。

1.内視鏡治療(胃粘膜下層剥離術)

 胃内視鏡を用いて胃の内側からがんを切除する方法です。がんが粘膜層または粘膜下層の浅い範囲にとどまっており、原則リンパ節転移の可能性がごく低い早期のがんで、一度に切除できると考えられる場合に行われます。 手術と比較すると、体に対する負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため食生活に対する影響が少ないです。出血や穿孔の合併症を起こすことがあります。

2.手術

 遠隔転移がない胃がんで、内視鏡治療による切除が難しい場合には手術による治療が推奨されます。手術では、がんと胃の一部または胃のすべてを切除します。同時に胃の周囲のリンパ節を取り除くリンパ節郭清を行い、食物の通り道を作る消化管再建を行います。 おなかを20cm程度切開して行う開腹手術と、腹腔内を二酸化炭素で膨らませて小さな穴をあけて専用の機械で行う腹腔鏡手術があります。

3.がん薬物療法(化学療法)

 がんや全身の状態により、さまざまな薬を単独または組み合わせて行います。 目的として2通りあります。

  •  a. 手術によりがんを取りきることが難しい進行・再発胃がんに対するがん薬物療法 薬だけでがんを完全に治すことは困難ですが、がんの進行をおさえることにより、生存期間の延長や、症状をやわらげることを目標とします。
  •  b. 術後補助化学療法 手術でがんを切除した後に、目に見えないごく小さながんによる再発を予防するために行います。
  • 当院での胃切除術(外科手術)の件数

      2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
    開腹手術 27件 33件 31件 30件 21件
    腹腔鏡手術 21件 16件 11件 10件 10件

    当院での内視鏡治療(胃粘膜下層剥離術)の件数

      2021年
    粘膜下層剥離術 37件